統合失調症とは
統合失調症は、幻聴や妄想の症状が特徴的な病気で、100人に1人弱がかかるとされています。
人の思考や感情(喜び、悲しみ、怒り、楽しみなど)は、脳内のネットワークによって表現されていますが、このネットワークが何らかの原因によって過敏に働いてしまうと、脳が対応できずに、うまく思考や感情を表すことができなくなってしまいます。
感情や思考などの精神機能を伝達するネットワークは、脳内のあらゆる場所に張り巡らされています。
このネットワークがうまく機能していないと、実在しない人が見えたり、幻覚が現れたり、周囲から悪口を言われているなどの幻聴が聞こえてきたりなどの様々な症状が現れます。
統合失調症の原因
統合失調症のはっきりとした原因は不明とされていますが一説によると、人は生まれながらにしてストレスにもろい神経系と、ストレスに強い神経系を持っている人がいて、患者さんの感じるストレスが「もろさ」の限界を超えたときに発病すると考えられています。
この他に遺伝、環境因子など、いくつかの要因が考えられますが、原因は1つと決めずに様々な危険因子が重なることで発症すると考えられています。
統合失調症の症状
統合失調症の症状には陽性症状と陰性症状があります。
下記に記載していますので、思い当たる症状がある場合は一度当クリニックにご相談ください。
陽性症状
- 独り言・独り笑いが多い
- 監視されている・盗聴されているような気がする
- 他人から危害を加えられているような気がする
- 本や新聞などが自分のことを指している気がする
- 悪口を言われているような気がする
- 自分が責められている、尾行されている、騙されている気がする
- 幻聴が多く見られる
- 他人が自分の心を読める気がする
- 話題がとりとめもなくあちこちに飛ぶ
陰性症状
- 自宅にひきこもりがちとなる
- 周りのことに興味関心がなくなる
- 人間関係に関心を示さなくなる
- 表情が乏しくなる
- 口数が少なくなる、質問に対してそっけない答えを返す
- 以前は楽しめていたことに関心を示さなくなる
- 感情の変化が乏しくなる
前兆期
特に目立った症状はありませんが、何となく異変を感じるようになります。
イライラ、眠れない、集中力が低下するなどの症状が続きます。
急性期
妄想、幻覚など不思議な体験をするので、自分の中で何かが変だと感じながらも、自分が病気だと思えず、他人から見ておかしな行動をすることがあります。
また、周りの出来事に敏感になり、不安や緊張を強く感じたりします。
消耗期
妄想や幻覚などの目立った症状は少なくなりますが、元気がなくなったり、やる気が起こらないことがあります。
これは、急性期に心と体のエネルギーをたくさん使ってしまったことが原因と考えられますので、薬を飲み続けながら十分な休息を取ることが必要です。
回復期
少しずつ元気が出てきたら、心も体も安定しているため、焦らず、ゆっくりと生活の範囲を広げていきましょう。
また、再発予防のために薬を忘れずに飲むことが大切です。
治療の方法は外来か入院で行うかの2つの方法があります。
治療の進歩によって、以前と比較して外来で治療できることが増えてきました。
外来か入院かを決める一律の基準があるわけではありません。
入院治療には、家庭の日常生活から離れてしまうという面があるものの、それが休養になって治療にプラスにはたらく場合もあります。
医療の側から見ると、病状を詳しく知ることができますし、検査や薬物治療の調整が行いやすいことが入院治療の利点です。
これらのバランスを考えて、治療の場を決めます。
医療者としても、できれば外来で治療を進めたいのですが、入院を検討するのは下記のような場合です。
- 自分が病気であるとの認識に乏しいために、服薬や静養など治療に必要な最低限の約束を守れない。
- 幻覚や妄想によって行動が影響されるため、通常の日常生活をおくることが困難。
- 日常生活での苦痛が強いため、患者さん本人が入院しての休養を希望している。
統合失調症の治療法
薬物療法
統合失調症の治療で中心となる治療法です。
お薬には抗精神病薬が使われます。再発を防止するためには長期間継続的に服用することが推奨されています。
この他にも、睡眠薬や抗不安薬、気分安定薬などが補助的に併用されることもあります。
副作用が現れたときに自己判断せずに相談しましょう
お薬の副作用には顔や首の筋肉などが硬直する、手が震える、眼球が上を向く、手足がムズムズするなどの副作用が起きます。
体がだるい、ふらつく、口が渇くなどの副作用が現れる場合もあります。
また、同じ摂取カロリーでも体重が増加しやすくなる症状や高血糖、食欲増進などの副作用が現れることもあります。
副作用が起きるからといって、服薬をためらったり、医師に相談せずに減薬することを考える方も少なくありません。
しかし、お薬で症状を抑えている以上、服薬を中止した場合には高い確率で症状が再発することがわかっています。
副作用の症状がみられた時には自己判断で服薬を調整せず、医師に相談するようにしましょう。
お薬の種類の変更や、精神症状への作用を考慮しながら、減薬するなどの対応が可能な場合があります。
精神療法
医師や臨床心理士などの治療者が患者さんに心理的な働きかけを行う治療法で、様々な種類があり、リハビリテーションの一環として行われることもあります。
支持的精神療法
統合失調症の患者さんは過度の緊張や不安など症状からくるつらさや苦しみを抱えています。
支持的精神療法では、このようなつらさや苦しみに対して共感を示し、そのうえで薬物療法が現在の症状を和らげるのに役立つことを説明し、病気に対する不安をできるだけ取り除くようにカウンセリングします。
支持的精神療法は特別な治療ではなく普段の治療のベースとなるもので、治療に不可欠な良好な患者と医師の関係を築くうえで不可欠なものです。